タマ子 Ⅱ（プロローグ）

たま子が赤ちゃんを産んで、12日目の事だったんだ。
昼頃、なんだかたま子の様子がおかしい。
大切に抱えてきた赤ちゃんをほったらかして、草むらにうずくまってる。

！？嫌な予感。
苦しそうに何かを吐こうとしてる。
もしかしたら？！

すぐに、獣医さんのところに連れて行った。
「多分毒でしょう」と先生に言われた。

目の前は真っ暗。
毒の種類によって薬も違うらしい。
助手の人に、市役所に電話をかけさせ、除草剤などを配ったかどうか調べさせた。

たま子の様子も色々聞かれた。
ネコイラズだということ！

たま子は凄い苦しみ様で、横になったまま、1メートルくらい上に飛び上がる。
今まで聞いたことのないような声を出す。
からだをさすってあげようにも、じっとしていられない。

何本も注射をして、それでも連れて帰れないので、先生にお願いして取り敢えず帰って来た。

1時間おき位にたま子の様子を知らせてくれる電話が鳴った。

そして、外が暗くなる頃、最後の電話だった。

飛んでいった。しんじられない！


たま子はきれいな箱に真っ白なタオルを敷いて、眠っているようだった。
さぞ苦しかっただろうに･･････

泣き虫のちぃちゃんがわぁわぁ泣いたのは、もちろんのこと。
そして、たま子は目を開けてくれることもなく、
声を出す事もなく、もちろん子ネコにお乳をあげることもできなくなって、
そぉっと我が家に帰って来たんだ。


たま子を獣医さんへ連れて行ってから、子ネコのおかあさんはいない。
ちぃちゃんがおかあさんをするしかない･･･
先生から液体のミルク缶とスポイドをもらい、
ミルクのあげ方、量、おしっこの出し方、うんちの出し方を教えてもらい、
いざ実践！

かんたんそうに思えるけど、とってもむずかしいんだ。
子ネコの抱き方、うーん･･･
小さすぎるから持ち方だね。
指でちょっと子ネコの口を開けてあげるようにして、
スポイドを突っ込む。
最初は子ネコだって本能で拒否してもがくよ。
何事かと思うものね･･･
なんせ生まれて12日目なんだから、
ほんとに1滴ずつたらすような感じ。
みんな4本足をちからいっぱい動かして抵抗する。
「大丈夫、もうすぐおかあさんが帰って来るからね」って
いいながらみんなでがんばったのに
たま子だって頑張ったのに･･･

夕方、たま子は2度と目を覚ます事なく、帰宅したんだ。

冷たくなったたま子は部屋の片隅に、
大好きだった缶詰めとお線香をおいて、
白いタオルにくるまって静かに眠っていた。

子ネコたちはたった20センチくらいの高さの箱さえ登れず、
中でたま子を探してキューキュー泣く。
がさがさがさがさ、カメさん歩きをしておかあさんを確認しようとする。
ちぃちゃんがいっしょうけんめい子ネコたちを抱いても
たま子の変わりはできないんだ。
ふかふかの毛布を入れてもだめ。
おなかいっぱいにして、うんちもおしっこも出してあげてもだめ。
4匹は昼からまったく寝ていない。

もうすぐ夜中の12時になろうとした時、
ちぃちゃんは、たま子が４ひきを生んだ時にひいていた毛布を
まだ捨てていないのに気がつき、
ちょっと汚いけどそれを子ネコたちの箱に入れてあげたんだ。

！！！！！！

がさごそがさごそと音がした後、
4匹はすやすや眠った。
信じられなかった。
たま子の臭いがするんだね。
自分たちが生まれた時の毛布･･･
たま子だと思ったのだろうか。

汚れた毛布の中で、4匹の子ネコは重なり合うようにして眠り込んだ。



次の日、ほんの数ヶ月だけど、
しっかり家族の一員だったたま子とお別れをした。

1時間も待たずに、たま子は、ちいさなちいさな桐の箱に入って、
ちぃちゃんのところに戻ってきた。
火葬場の人からお骨の入ったその箱を受け取ったら、
あったかかったよ。
ちぃちゃんはこころのなかで、
「たま子、ありがとう」って言って、
両手でしっかりたま子を抱いて
帰って来た。


家に着いたら、ちぃちゃんは母親代わり。
悲しんでる余裕がなかった分、救われたのかもしれない。

いやぁ、
目も開かない這ってる子ネコの子育てなんて、
やったことあるはずないんだから、もう、戦争みたいなもの！
まして、4匹だからね。
1匹ずつスポイドでミルクをあげて、ティッシュペーパーでおしっこが出るように
ちょんちょんとなでてあげると、ちょろちょろっと、出てくるんだ（笑）
うんちを出してあげるには、もっと根気がいるけどね。
すぐには出ないって事。
だからって、そのままにしてたら、おなかがパンパンになって、
死んじゃうんだ。
これがだいたい3時間おき･･･
4匹すべてが終わって、やれやれと思うと、
もうおなかが空いたと、キュンキュン泣き出す始末。
ちぃちゃんとちぃちゃんのおかあさんと交代で代理母。

ああ･･･
母親って寝不足なのね･･･（とほほ。。。）
　
「のらたちよ、そらを飛べ！」より

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タマ子（プロローグ）Ⅰ

そう、すべてはここから始まったんだ。



白黒のブチの猫が二匹、垣根の隙間からこっちを見ていた。
小さい猫は、大きい猫にぴったり寄り添っていた。

これから「ちいちゃん」がお話していくのは、ずーっと昔・・・
およそ20年前のこの日から始まった、本当のお話だよ。

ちいちゃんは、猫を飼っていなかったから、エサがない・・・
仕方なくパンをちぎってあげたんだ。
二匹のネコはすごくお腹が空いていて、
まるで、飲み込むようにパンを食べた。

食べ終わったおかあさんネコは,
子ネコを置いてひとりでどこかに行ってしまった。

子ネコが追いかけようとした時には、
もうおかあさんネコはどこにも見えなかったんだ。

子ネコはおびえながら、ちいちゃんの手の中にいた。
そのとき、ちいちゃんは、子ネコを飼う決心をしたんだ。

その子ネコに、「たま子」という名前をつけた。
ありきたりの名前だよね（笑）





次の日、子ネコの「たま子」は妙に外に出たがってね…
ちいちゃんは、そっと見守っていた。

そうしたら、なんと、お母さんネコが少し離れた所から、
こっちを見ている。
間違いない！　昨日のおかあさんネコだ！！
「たま子」はすぐに気がついてお母さんネコの方にちからいっぱい走った。
ところが、おかあさんネコは、さーっと、いなくなってしまったんだ。

「どうして・・・？」

ちいちゃんには解らなかった。
そして、少しだけ悲しかった。

ひちりぼっちの「たま子」の事を大切にしてあげようと思った。

その次の日も、「たま子」は外に出たがって・・・
そっと見守っていると、また、少し離れた所にお母さんネコの姿があった。
子ネコの「たま子」が見つけて走っていくと、昨日のようにどこかへ行ってしまった。

こんな事が一週間くらい続いたんだ。
そしておかあさんは来なくなった。

ちいちゃんは思った。

大切な自分の子供の様子を毎日見に来ている。
ここなら、安心して「たま子」を預けられるって、信じてくれたのかもしれない。

ちいちゃんは、こころのなかでお母さんネコに約束したんだ。
「たま子」を大切にするからねって・・・・・

てくてくてく…

たま子が、最近太った。

おなかのあたりがな～んか変･･････
あっ!?もしかしたら！

はい、その通り(笑）

動物の成長は早いね。
この間まで子ネコだったたま子に、赤ちゃんができたんだ。

ちぃちゃんは、最初から考えていた。
１回だけ赤ちゃんを産ませてあげようとね。
その後は、ちょっとかわいそうだけど避妊の手術をしなくてはと･･･

ネコは約3ヶ月で赤ちゃんが生まれるんだ。
ちぃちゃんは指折り数えながらその日を待った。

たま子のおなかはとんがってきた！
もうすぐだ！！！

今日かな？

明日かな？

毎日毎日、わくわくして朝を迎えてたよ。

とうとうその日が来た！
う、う、生まれたーっ！
4匹･･･らしい。

たま子は興奮して、すぐには赤ちゃんネコに触らせてくれない。
でも、多分4匹！

ちぃちゃんは、赤ちゃんネコを見たくて、触りたくて、
（あまりに小さすぎて、抱くっていう感覚じゃないんだ）笑
それでもじっと我慢して、1日はそっとしておいてあげた。
きっと、たま子は凄く疲れたと思うからね。

たま子、お疲れさま。

1日経ったら、たま子も少し落ち着いた。
ところが、「う～」と唸り声をあげて、赤ちゃんネコを守ろうとする。

最初は、数十秒位しか赤ちゃんに触れなかったね。
だって、たま子ったらこわいんだもの（苦笑）

こういう時って、全部お母さんから取り上げるとダメなんだ。

ちぃちゃんは「ムツゴ○○先生」じゃないから、くわしい理由はわからないけど、
生んだばかりの赤ちゃんに危険が迫ってるかもしれないとお母さんが感じた時、
最悪の場合、食べちゃったり、噛み殺してしまったりするらしいんだ。

最低1匹以上はお母さんの側において、1匹ずつ見せてもらう。

やっぱり4匹だった。
真っ黒いのが3匹、たま子似のブチが1匹。
なんて小さいんだろ！
ぽよんぽよんしてる。
柔らかくて目は閉じてて、カメみたいに這って、
それでも本能でお母さんのお乳を探す。

ちぃちゃんは、もっといっぱい赤ちゃんネコに触りたかったけど、我慢、がまん！

そっと部屋を出た。

 

もうもう、目に入れても痛くないほどかわいい！
4匹まとめて、ちぃちゃんの掌（てのひら）にのっちゃう～
４ひきと1匹〔たま子）は1日中くっついててね。
おしっこが出ても、うんちが出ても、たま子がなめてあげるんだ。
っていうか、
なめてあげないと、自分の力ではまだ出せないんだ。
だれかがキュンキュンいうと、たま子はその子をくわえて引き寄せ、
愛情いっぱいに、なめてあげてる。
おかあさんの愛は、ほんと！凄いわ。うん。

４～５日経つと、
ぽやぽやと綿毛のようだった毛も、少し太く、増えたような気がする（笑）
ほんの少し、大きくなったかなぁ･･･

4匹がお腹いっぱいで、すやすや眠ると、
そのすきに、たま子は急いで散歩に行って、急いで帰って来る。
きっと、心配なんだね･･･

 

さてさて･･･

たま子かあさんは、今日ももくもくと子育て。
最近は、4匹一緒に抱いても怒らなくなった。
でも、とーーーっても不安そうなかおをするけどね。

「たま子～、ちょっとだけ見せてね。大丈夫。心配しないでね。」
なぁんて声を掛けながら、触る子ネコの柔らかさったら・・・・・
むふふのふ。。。。
まだまだ、ちぃちゃんの掌（てのひら）に4匹が乗るのは、しばらく続くなぁ（にたぁ）
ちいさい、ちいさい～
だけど、動きは活発になった。
カメさん歩きも、力強いったら！

ああ・・・
この子達、ずーっと見ていたい。
大きくならなかったらいいのに･･･なんて思ったりしてね。

もう、貰ってくれる人、決まっちゃってるんだ。
子ネコ4匹のうち、3匹。
どの子が残るかはわからないけど、1ヶ月半後に家にいるのは、
おかあさんのたま子と残りの1匹･･･

先のことを考えると、妙に寂しくなっちゃうんだ。
変だよね（苦笑）

こんな幸せいっぱいの日が続いて、
まさかあんな事が起こるなんて、
ちぃちゃんも、たま子も4匹も思いもしなかったんだ。

のら達よ、そらを飛べ！　　より

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独り言☆

みんなとちぃちゃんの思い出をいっぱい振り返ってみた

最後の五匹…

きみたちが最後のこどもたちさ

20数年、いっぱい愛したヨ

いっぱい愛と癒しをもらったね。。。


たまこが始めて子ネコを連れてやってきたあの日

すべてがあそこから始まったんだ。。。

雨が降る日も、雪が降る日も、

ちぃちゃんが熱を出した日も、

君達にご飯をあげに、空き地に行くのは、辛い日もあったなぁ。。。

ちぃちゃんのお母さんが医療事故で寝たきりになった時、

本当はね、とっても君達が負担になったこともあったんだ

そんな8年の間に

ネッツが逝った　19歳

こう太が逝った　12歳

ことちゃんが逝った　18歳

シュミが逝った　19歳

空き地のちゃーちゃんが逝った

みーにょが逝った

そしてワタシのすべてだった全盲のちゃーちゃんが逝った…

そして母が助かるかどうか解らなかった時

ケッちゃんはワタシが泣くのをじっと見てた

その夜

ケッちゃんはふっと外に出て二度と帰ってこなかった

次の日

主治医の先生から母は峠を越したと言われた。。。。


みんな本当に大切だった

うん。。。。

ちぃちゃんの命を引き換えにしても、

君達を放り出す気はなかったよ。。。


ちぃちゃんの大切なお母さんが逝ってしまった今。。。。今

君達と過ごせることの幸せをかみ締めてる


ほんとうにありがとう。

君達とさよならをする時、

多分、ちぃちゃんはもうネコを飼わないよ。。。


だって、19年も生きたら、

看取ってあげられないかも知れないもの（笑）


多分、50匹以上ノラたちを見てきたと思う

ポンちゃん、モコちゃん、ブッコ、おデブ、そしてキン太、

君達が最後の子だよ

こころから、感謝してる。。。。。

出会えたこと。。。。。。。。。。。。。